非水溶性PFAS

医薬品での活用例(非水溶性PFAS)

医薬品として活用されているPFASを集めてみました。赤丸で囲んだ部分が”PFA(PerFluoroAlkyl)”にあたる骨格です。

糖尿病治療薬、逆流性食道炎治療薬、制吐薬、悪心・嘔吐予防薬、抗炎症薬、高脂血症治療薬、多発性硬化症治療薬、副甲状腺機能亢進症治療薬、カルシウム代謝異常症治療薬、抗菌薬、多剤耐性肺結核治療薬、抗HIV薬、C型肝炎ウイルス感染症治療薬、緑内障治療薬、慢性便秘治療薬、下痢症治療薬、抗悪性腫瘍薬などの薬として非水溶性PFASが活用されています。

ではなぜフッ素原子を持ったPFASタイプの薬を開発するのでしょうか?下記5つの効果を期待するためだそうです。

①ミミック効果:今までの医薬品の水素原子をフッ素原子に置き換えても同じ様に生体内で認識される(水素原子とフッ素原子の大きさが近いため)

②極性効果:フッ素原子は電子を引っ張る力が強い。これにより、狙ったタンパク質との親和性を高めたり、体内での安定性が向上したりする。

③ブロック効果:炭素ーフッ素間の結合は強い。代謝を受けにくくなり、薬が効く時間が長くなる。フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)と言われるプラスの面を利用。

④疎水性効果:フッ素化合物の水を嫌う(弾く)性質を利用し、薬物吸収や輸送の促進を図る

⑤水素結合等による標的酵素との親和性増大の効果:水素原子(弱い+電荷)とフッ素原子(弱い-電荷)のと間に起こる電気的な相互作用を利用

※CMC社:有機フッ素化合物の最新動向p.127の記載を筆者なりに易しく要約しました。厳密には正しくない表現もあるでしょうが、ご容赦願います。

ということで、お薬にフッ素原子を入れたり、お薬として非水溶性PFASが利用されるのにはちゃんと理由があります。

ABOUT ME
神原 將
お茶の水女子大学・URA。有機フッ素化合物の研究を支援し、実用化を目指して活動中。水溶性PFAS問題について化学者の視点から発信します。 PFASに関する講演、ご相談を受け付けています。大阪大学大学院・工学研究科・応用化学専攻(修士卒)→ダイキン工業・研究員→お茶の水女子大学・研究員を経て現職。
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