医療分野でも多くの非水溶性PFASが使われています。まずカテーテル、人工血管、人工心臓の部品としてテフロンが利用されています。テフロンは体内で化学反応を受けづらく、すべりやすさによって摩耗しにくいことから、体内での長期使用に耐えることができます。また、異物反応も起こしにくく、人体に対して悪影響を及ぼしにくいことから、生体適合性が高い材料とも言われます。
内視鏡や人工透析装置にはフッ素ゴムが使われています。内視鏡の様に柔軟に動ける必要がある材料としてはゴムが適していますが、その中でフッ素ゴムが使われるのは、使用後の消毒・滅菌作業に耐えられるためと思われます。(具体的にどの様な消毒・滅菌作業が行われるのかは筆者には分かりませんが)加熱、薬液処理、煮沸、柴外光照射などの様々な消毒・滅菌作業に対して、フッ素ゴムならば耐えることができるでしょう。
また、手術着にはフッ素系の撥剤が加工されています。水や油をはじく材料を不織布に加工することで、医療者を体液から守ります。この様な撥剤は、化学的に弱いエステル結合によって、フッ素部分を繋いでいます。そのため、日常的な衣服などではアルカリ性の洗剤を使った洗濯等により、フッ素部分が脱落してしまうリスクがあります。脱落したフッ素部分は水溶性の含フッ素カルボン酸類(PFOA類似物質)に変化していくことも懸念します。そのため医療用途の様に「液を弾く必要性が高い分野等」に限って使用するのが良いと思います。また、化学的に弱いエステル結合を持たない、より安全性が高いフッ素系撥剤の開発も望まれます(非フッ素系の撥剤でも実は水を弾くことはできますが、やはり油成分まで弾くとなると、中々難しいと聞きます)。

この様に、医薬品以外の医療分野でも様々な非水溶性PFASが利用されています。医療機器や手術器具なども含めていくと、まだまだ多くの例がありそうだと予想しています。