PFAS全体

日本のフッ素化学メーカーに期待すること

1.研究開発部門での取り組み

(1)代替物開発の加速

危険性が指摘されながらも、現代社会を成立させるために引き続き使用せざるを得ない化学物質があります。これらについては、日本のフッ素化学メーカーによって、代替物開発を進めていただきたいと期待します。(筆者が把握している限りでは)下記についてより安全な代替物が開発されると、社会の安全性が高まると期待します。

・泡消火剤

・手術着等の特殊繊維のための高耐久性撥剤

・フッ素樹脂・ゴムを製造するための助剤としての短鎖カルボン酸類

・半導体製造のための短鎖スルホン酸類

・より高度に安全な分子設計がなされた含フッ素農薬

(2)パーフルオロアルキルカルボン酸類、スルホン酸類の変換技術の開発

カルボン酸類、スルホン酸の分解技術で実用的なものを開発し、実際に活用されることを期待します。また、分解にとどまらず有用物質への変換できる技術にも期待したいです。

2.製造部門での取り組み

(1)パーフルオロアルキルカルボン酸類(C6カルボン酸やGenX等)の漏洩の徹底防止

PFOAの代替物質として使用されているC6カルボン酸やGenX等のパーフルオロアルキルカルボン酸類について、廃水等に含まれる形で漏洩していないか、厳しい基準で徹底的に管理されることを期待します。例え世界や日本の規制が不十分であっても、良識ある倫理観の下、独自の高い基準を設定し、安全性の高い工場運営を行っていただきたく思います。できればその高い基準を公表することで、地域社会からの信頼を得るとともに、安全な社会を実現する法整備をけん引していただきたく思います。また、地域社会を汚染させないことはもちろんのこと、現場の労働者の安全も担保いただきたいです。

3.営業部門での取り組み

(1)より安全性の高い製品で市場を席巻する(リスクが高い時代遅れな製品を市場から追い出す)

安全性の高い製品を安全に製造できる技術を持つ日本企業がシェアを伸ばしていくことで、リスクが高い時代遅れな製品の流通を抑制していただきたいと願います。欧米メーカーがフッ素化学産業を手放していっている現状において、良識と力のある日本企業にこそ期待したいことです。

(2)「全PFAS=危険」という誤解の払拭

顧客に対し、科学に則った正しい情報を提供し、「全PFAS=危険」という誤解を払拭していただきたいと思います。また、EUによる法規制提案の非現実性を説明するとともに、実際に規制される分野や製品は限られたものになることを説明し、顧客を安心させてほしいと思います。特に危険性を示す根拠・仮説のない非水溶性PFASに対して、非PFAS化の開発を行うことは大きな無駄があり、該当企業や日本国にとって重大な損失に繋がると懸念します。

ABOUT ME
神原 將
お茶の水女子大学・URA。有機フッ素化合物の研究を支援し、実用化を目指して活動中。水溶性PFAS問題について化学者の視点から発信します。 PFASに関する講演、ご相談を受け付けています。大阪大学大学院・工学研究科・応用化学専攻(修士卒)→ダイキン工業・研究員→お茶の水女子大学・研究員を経て現職。